大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

函館地方裁判所 昭和34年(ヨ)113号 決定 1959年11月21日

債権者 函館ドツク株式会社

債務者 全日本造船労働組合函館ドツク函館分会全日本造船労働組合函館ドツク第二分会

主文

1  債権者会社函館造船所内第一号乾ドツク及びその附近(但し別紙図面赤線をもつて囲む部分)に対する債務者らの占有を解き、これを債権者の委任する執行吏の保管に移す。

2  債務者らは右ドツクに入渠中のイタリヤ貨物船アスプロモンテ号が出渠するまで前項執行吏保管に係る個所に立入つてはならず、又債権者らの行う右アスプロモンテ号出渠作業を妨害してはならない。

3  債務者らが前項の命令に違反するときは、執行吏は、右命令趣旨の実効をあげるため適当の措置をとらなければならない。

(注、無保証)

(裁判官 江尻美雄一 小山俊行 新居康志)

(別紙省略)

【参考資料】

仮処分申請

申請の趣旨

一、債権者会社函館造船所内第一号乾ドツク及びその附近(但し別紙図面赤線をもつて囲む部分)に対する債務者等の占有を解きこれを債権者の委任する執行吏の保管に移す。

二、債務者らは右ドツクに入渠中のイタリヤ貨物船アスプロモンテ号が出渠するまで前項執行吏保管にかかる個所に立入つてはならず、又債権者の行う右アスプロモンテ号出渠作業を妨害してはならない。

三、債務者らが前項の命令に違反するときは執行吏は右命令趣旨の実効をあげるため適当の措置をとらなければならない。

申請の理由

一、債権者は船舶の新造修理を目的とする株式会社で東京都中央区日本橋通二丁目三番地に本社を有し函館市弁天町八十八番地に函館造船所、室蘭市祝津町に室蘭製作所を有する。

債務者全日本造船労働組合函館ドツク函館分会(以下単に函館分会組合と略称する)は右函館造船所の本工員千百五十八名によつて組織された労働組合であり、債務者全日本造船労働組合函館ドツク第二分会(以下単に第二分会組合と略称するは右函館造船所の臨時工員二百三十六名によつて組織された労働組合である。

二、債権者は会社の手持工事量の減少及び受注見込の皆無より営業成績が特に悪化したのでその対策に苦慮した結果、その対策としては従業員の減少以外に方法の無いことを確認し昭和三十四年十月二十一日債務者両組合を以つて組織する函館ドツク労働組合連合会に対し会社の現況及びこれに対し必要なる工員数を詳細説明のうえ第二分会組合の組合員二百三十名その他組合員外の臨時工員三十六名嘱託四十名計三百六名を昭和三十四年十月三十一日限り平均賃金の三十日分の解雇予告手当を支給して解雇する旨の申し入れを行つた。

三、右に対し債務者両組合は三百六名の解雇は不当なりとの態度を表明したので債権者は両組合と数度の団体交渉を為したがついに意見の一致を見るに至らず昭和三十四年十一月十日団体交渉は決裂し争議に入るに至つた。

四、その間非組合員たる臨時工員並に嘱託は退職を承認し更に第二分会組合中の九十名は退職を承認し解雇手当を受領したが百四十名は解雇に応じない態度を表明し引き続き会社内に出働を継続している。

五、昭和三十四年十一月十日債権者の函館造船所一号乾ドツクにイタリヤ貨物船アスプロモンテ号は中間検査を受けるため塗装工事に入渠し同月十二日午前中に同工事は完了したので同日午後出渠することになつて居たところ同日午後一時十分頃突然債務者両組合の組合員数名が前記一号乾ドツク扉船上並びにその周囲にピケツトを張り同船の出渠作業拒否を行い債権者側に於て争議中の組合員外の者によりこれを出渠せしめようとする作業を阻害するに至つた。

六、右アスプロモンテ号は木材及び雑貨類積込みのためカナダ国バンクーバー港に昭和三十四年十二月十一日迄に到着しなければ同船の傭船契約は取消される危険がありその損失は莫大なもので回復し得ないものであり同船の速力は毎時九哩よりなく函館市よりバンクーバー港まで順調に航行し得たとするも最底二十日間を要する従つて一刻も早く出渠せざるを得ない急迫した事情にあるものである。

七、然るに同船を無理に出渠せんとすれば債務者組合員等を前記扉船上から排除せねばならないのであるが扉船は長さ二五・七米、幅二・九米のものでありこの狭い扉船上又はその周囲で押し合いもみ合いが生ずると海中又は深さ九米のコンクリートの渠底に墜落し死傷者の発生する虞甚だ大なるものがある。その為同船の船長は函館市長又は渡島支庁長等に組合員との団体交渉円満解決の仲介を依頼したが不成功に終り債権者も両組合と連日団体交渉を為して居るが解決するに至らぬものである。

これが解決を遅延することは国際信用問題にも影響するものがあるので債権者はこれが排除を求めるための本申立に及びたるものである。

(別紙省略)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例